CX(顧客体験)とは?向上させるメリットや方法などをわかりやすく解説

CX(顧客体験)とは?向上させるメリットや方法などをわかりやすく解説

製品やサービスを認知・購入・利用した際などに顧客が感じる「価値全体」のことを指す、CX(顧客体験)。ビジネスを取り巻く環境の変化に伴い、CXへの関心が高まっています。CXを向上させるには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。今回は、CXの定義や向上させるメリット、方法などを解説します。

CX(顧客体験)とは

CXとは、「カスタマーエクスペリエンス(customer experience)」の略語で、顧客が商品やサービスを認知・購入・利用したり、アフターフォローを受けたりした際の“体験”や“経験”に伴って感じる価値のこと。「顧客体験」「顧客体験価値」「顧客経験価値」とも呼ばれます。

顧客が感じる価値というと、商品・サービスの「品質」「性能」「機能」といった物質的価値を連想する方もいるかもしれません。しかし、CXはむしろ、「心地よく感じる」「感動する」「興味をそそられる」といった、心理的・感情的な価値(経験価値)に注目した概念です。

CXについての理解を深めるため、経験価値の種類やCS/UXとの違いについて、見ていきましょう。

CXにおける経験価値は5種類ある

CXにおける経験価値は、「Sense(感覚的)」「Feel(情緒的)」「Think(知的)」「Act(行動、ライフスタイル)」「Relate(社会的)」の5種類があるとされています。それぞれについて、見ていきましょう。

Sense(感覚的)

Sense(感覚的)とは、顧客の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)に働きかけることによって生み出される価値のこと。

具体的には、「お店から見える景色がよい」「流れている音楽が心地よい」「クッションやソファの肌触りが優しい」「注文した料理が美味しい」「飾ってある花の香りに癒やされる」などが該当します。

Feel(情緒的)

Feel(情緒的)とは、顧客の感情や内面に働きかけることによって生み出される価値のこと。

具体的には、「親切・丁寧な接客に感動したり、安心したりする」「映画を観て、感動する」「好きなアーティストのライブに行き、興奮する」などが該当します。

Think(知的)

Think(知的)とは、顧客の創造性や知的欲求に働きかけることによって生み出される価値のこと。

具体的には、「さまざまな形・大きさのブロックを見て、『何を作ろうか!』と好奇心がわく」「手品を見て、『どのようなトリックだろう?』と知りたくなる」などが該当します。

Act(行動、ライフスタイル)

Act(行動、ライフスタイル)とは、顧客の行動やライフスタイルに働きかけることによって生み出される価値のこと。これまでにない新しい体験をすることで、顧客は普通に生活しているだけでは得られない新しい価値を得ることができます

具体的には、「初挑戦のアクティビティが気に入り、『またやってみたい!』と思う」「子どもが職業体験施設で、『もっといろいろな職業を体験してみたい!』と思う」などが該当します。

Relate(社会的)

Relate(社会的)とは、「特定の集団・文化に属している」という意識を顧客に感じてもらうことによって生み出される価値のこと。顧客は、自尊心を高めたり、特別感を得たりすることができます

具体的には、「会員限定のイベント」や「顧客専用のコミュニティ」「ファンクラブ」などに参加・加入することによって得られる価値が該当します。

CSやUXとはどう違う?

CXと混同されがちなのが、「CS」や「UX」です。CXとCS、UXの違いについて、解説します。

CSとの違い

CSとは、「カスタマーサティスファクション(customer satisfaction)」の略語で、「顧客満足度」のこと。「顧客が商品・サービスに対して、どのくらい満足しているか」を示す指標です。

CXとCSでは、「何を重視するか」が異なります。先述の通り、CXで重視されるのは商品・サービスを通じて得られる「経験価値」です。一方、CSでは、「商品やサービスに対する期待値」を超えられたかどうかが重要となります。

仮にCSが高かったとしても、顧客が自社の商品・サービスを購入したり利用したりする過程で経験する体験自体に価値を見出していなければ、CXは高いとはいえません。一方で、CXが高い場合には、大前提としてCSも高いです。すなわち、CXはCSよりも上位の概念であるといえるでしょう。

【関連記事】CSとは?顧客満足度を上げる取り組みや分析方法、アンケート調査のコツ

UXとの違い

UXとは、「ユーザーエクスペリエンス(user experience)」の略語で、「ユーザー体験」のこと。商品やサービスを利用したことにより得られる価値を意味します。

CXとUXの一番の違いは、「対象の範囲」です。先述の通り、CXでは商品・サービスの「認知」「購入」「利用」「アフターフォロー」で得られる価値が対象ですが、UXは「利用」で得られる価値に限られます。

この他、「(社内で)関係する部門の数」や「施策の実施期間」などの違いもあります。関係する部門の数については、UXの場合は商品・サービスの開発・提供をする部門のみです。一方、CXの場合には、それらに加えて、流通、カスタマーサポートなどさまざまな部門が関わってきます。こうした違いがあるため、施策の実施期間についても、CXの方がUXよりも長期におよびます。

CXを向上させる4つのメリット

CXを向上させることにより、以下の4つのメリットが期待できます。

  • 顧客ロイヤルティの向上
  • 既存顧客の口コミによる宣伝効果
  • 競合他社との差別化
  • 企業の業績改善

それぞれについて、見ていきましょう。

顧客ロイヤルティの向上

CXが高い状態とは、顧客一人ひとりが自社の商品・サービスによって得られる多様な価値に満足し、「商品・サービスを使い続けたい」「この会社の商品・サービスが好き」という状態ともいえます。そのため、CXを向上させることにより、企業に対する信頼や愛着の大きさである「顧客ロイヤルティ」も自ずと高まります

顧客ロイヤルティが向上することで、「解約率の減少」や「リピート率の向上」「LTV(顧客生涯価値)の向上」にもつながるでしょう。

既存顧客の口コミによる宣伝効果

CXが向上すれば、「自分が体験した商品・サービスの良さをいろいろな人に広めたい」との思いから、顧客が自社の商品・サービスを口コミで宣伝してくれる可能性が高まります。よい感想がSNSや口コミ投稿サイトに投稿され、情報が拡散すれば、ブランドイメージが向上し、新規顧客の獲得につながるでしょう。

また、「CX向上」→「既存顧客の口コミによる宣伝」→「新規顧客の獲得」という一連の流れを継続的に回し続けていくことにより、広告宣伝費の削減が可能になることも、CX向上のメリットといえます。

競合他社との差別化

商品・サービスにもよりますが、業界レベルでの品質改善や顧客の価値観・ニーズの多様化などにより、顧客は単に商品・サービスの「品質」「性能」「機能」だけでは比較検討しにくくなってきています。裏を返すと、企業にとっては、商品・サービスの「品質」「性能」「機能」だけでは競合他社との差別化が難しくなってきているといえるでしょう。

そうした状況において、競合他社との差別化を図るために重要となるのが、CX向上です。競合他社にはない特別な体験を提供することで、顧客にとっての商品・サービスの価値が高まり、既存顧客のアップセル(上位ランクの商材の購入・契約)やクロスセル(既に使っているものに加え、別の商材も購入・契約)が促されます。

加えて、先述の「口コミによる宣伝効果」も生じれば、競合他社から自社への顧客の乗り換えも期待できるでしょう。

企業の業績改善

上述のメリットやそれらに付随して期待できる効果により、企業の業績が改善します。このことは、CX向上の大きなメリットといえます。

企業の業績が改善すれば、顧客のニーズにマッチする新商品・サービスの企画開発に予算をかけられるようになり、企業の中長期的な成長にもつながるでしょう。

【ステップで紹介】CXを向上させる方法

CXを向上させるためには、以下のようなステップで進めることが重要です。

それぞれのステップについて、解説します。

ステップ1:ペルソナを明確化し、行動を理解する

まずは、ペルソナを明確にし、行動を理解する必要があります。ペルソナとは、企業が提供する商品・サービスの典型的な顧客像のこと。ペルソナの明確化は、顧客視点に立ったCX戦略の策定に寄与します。

ペルソナを設定する際は、企業が想定する顧客像に囚われることなく、実際の顧客像を反映したものとすることが重要です。既存顧客に関するデータや市場調査結果などの客観的な情報を参考に、ペルソナを明確化しましょう。具体的には、「年齢」や「性別」などの基本情報をはじめ、「家族構成」「職業」「年収」などできるだけ多くの情報の収集・分析が必要です。そうすることで、ペルソナのライフスタイルを具体的にイメージできるようになり、「顧客がどのようなことに価値を見出すのか」を想像しやすくなります。

ペルソナの行動を理解するためにおすすめなのが、カスタマージャーニーマップの作成です。カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを「認知」してから、「購入」「利用」「共有(口コミの拡散など)」するまでの一連の行動および感情を時系列でまとめたもののこと。カスタマージャーニーマップを作成することで、このあとのCX戦略の策定がしやすくなります。

なお、ペルソナやカスタマージャーニーマップは、顧客の価値観・ニーズの変化をはじめとするさまざまな要因により、変化する可能性があります。一度作成したらそれで完成と考えるのではなく、定期的に見直し、必要に応じて変更することが重要です。

ステップ2:現状・課題を把握し、CX戦略を策定する

次に、カスタマージャーニーマップや顧客アンケート結果、問い合わせの応対履歴などをもとに、顧客の現状・課題を把握します。認知・購入・利用といったフェーズごとに「顧客が何に対して、どのような悩みを抱えているのか」を特定しましょう。その上で、顧客の課題解決に向けた対応策を検討し、CX戦略に落とし込みます。

ステップ3:CX戦略の実践・効果測定・改善を繰り返す

CX戦略が定まったら、実行に移します。

なお、CX戦略は一度実践すればそれで終わりというものではなく、継続的に実施していくことにより効果を実感できるものです。効果測定を定期的に行いながら、改善を繰り返していきましょう。

CXを向上させるための取り組み例

CXを向上させるためには、具体的にどのようなことを行えばよいのでしょうか。CXを向上させるための取り組み例を紹介します。

ブランディングに取り組む

ブランディングとは、自社のブランド価値を高めるために実施する施策のこと。競合他社との差別化を図ることが目的です。

ブランディングでは、自社の商品・サービスの「価値」や「コンセプト」を明確にした上で、それらに応じた最適な方法で情報発信を行うことが大切とされています。仮に、「高級ブランドなのに、セール情報ばかり送る」「低価格がウリの小売店なのに、高級食材の発売情報をお知らせする」といったことがあると、顧客の求めている価値とはかけ離れてしまい、顧客の混乱・不満や顧客離れを招く可能性があるためです。

先述の通り、CXでは「経験価値」が重視されます。そのため、そもそも顧客の求めている価値とかけ離れた情報発信がなされていては、CX向上が図れないのは自明の理といえます。反対に、ブランディングを適切に行い続けることができれば、CX向上に大きく寄与するでしょう。

顧客とのコミュニケーション方法を見直す

顧客とのコミュニケーション方法を見直すことも、CX向上に効果的とされています。具体的には、「顧客との接点を増やす」「One to Oneマーケティングを行う」のがおすすめです。

顧客との接点については、顧客の多くがスマホを日常的に使っていると想定されるため、スマホ向けの発信方法を増やすとよいでしょう。例としては、「スマホに対応した自社HPで、商品・サービスに関連したお役立ちコンテンツを発信する」「自社アプリをダウンロードしているユーザーを対象に、限定クーポンを発行する」「複数のSNSで広告を出す」などが挙げられます。

One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりの消費者の購買傾向からニーズを汲み取り、個々人のニーズに応じた最適なコミュニケーションを行うマーケティング活動のことです。One to Oneマーケティングを行うことにより、顧客の自社への愛着を高める効果が期待できます。取り組みの具体例としては、「SNS広告のセグメント配信」や「購入履歴に基づいたレコメンデーション」「顧客の属性・状況に応じたDM送付」などがあります。

こうした取り組みにより、顧客は適切なタイミングで、自分自身にとって価値の高い商品・サービスを認知・購入・利用できるようになるでしょう。その結果、CX向上が期待できます。

DXを推進する

DXとは、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語で、デジタルやITの技術、蓄積されたデータを活用して、ビジネスや業務プロセスに革新的な変化をもたらすこと

DXを推進することにより、「デジタルマーケティングが可能になり、『認知』の段階にいる顧客へのアプローチがしやすくなる」「AIやIoTを活用したサービスの提供が可能になり、顧客により高い価値をもたらせる」といった変化が起こると考えられます。すなわち、DX推進は、CX向上につながるのです。

CXは対象の範囲が広いこともあり、紹介した3つの取組みのどれか一つを実施しただけでは思うような成果につながらないケースも考えられます。そのため、自社の実情を踏まえた上で、3つの取組みをバランスよく実施するとよいでしょう。

CX向上に向け、DXを推進する際のポイント

CX向上に向け、DXを推進する際にはどのような点を意識するとよいのでしょうか。DX推進のポイントを、キッセイコムテックの山田高志が解説します。

【関連記事】企業がDX推進を成功させるには。課題や推進の5ステップ、ポイントを押さえて紹介!

現状を把握した上で、データの利活用を進める

先ほど紹介したOne to Oneマーケティングを実施するためには、データの利活用が不可欠です。また、データの利活用はDX推進において目指すゴールの一つでもあります。CX向上のためにDXを推進する際は、データ利活用を積極的に進めていくようにしましょう。

一方で、データ利活用が適切に行えている企業はそう多くはないのが現状です。「データ収集を行えていない」「収集したデータを全く活用できていない」などの課題を抱えている企業も多いでしょう。そのため、「自社がどの程度、データ利活用をできているか」を把握した上で、対策を検討・実施することが重要です。

自社に適したツール・システムを導入する

CX向上に向けてDXを推進する際は、自社に適したツール・システムを導入することも、重要です。ツールやシステムを選ぶ際は、「セキュリティー」や「操作性」「他のツール・システム」「費用対効果」などがポイントとなります。

「CX向上」という目的を念頭に入れた上で、複数のツール・システムを比較検討し、自社に最も適したものを導入するとよいでしょう。

DX推進などにより、CX向上を図ろう

CXを高めることにより、「顧客ロイヤルティの向上」や「競合他社との差別化」などが期待できます。ペルソナを明確にした上で、顧客の課題感を踏まえたCX戦略を策定し、実行に移していきましょう。

CX向上のための具体的な取り組みとしては、「ブランディングの実施」「顧客とのコミュニケーション方法の見直し」「DXの推進」が考えられます。DXを推進していく場合は、先ほど紹介したポイントを押さえることが大切です。

DX推進などによりCX向上を図り、企業の成長につなげていきましょう。

CX向上に寄与するシステム構築サービス「AxisBase」

AxisBase」はキッセイコムテックが提供する、セミオーダー型のシステム構築サービスです。テンプレート機能を活用することにより、フルオーダー型に比べ、「高品質」「低コスト」「短納期」でシステムを構築できます。また、データ活用を促進するデータ検索・出力・連携機能の他、製品IoT機能(「AxisBase IoTテンプレート」)にも対応しているため、CX向上に寄与するでしょう。

「CX向上のためにDX推進をしたい」というニーズがありましたら、AxisBaseの活用をご検討ください。

セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現

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