CO2排出量の計算方法を解説。計算を効率化できるツール紹介も

CO2排出量の計算方法を解説。計算を効率化できるツール紹介も

地球温暖化への対策が急務となる今、カーボンニュートラル実現に向けた動きが国内外で進められています。対策を進める上で重要なこととして、事業活動で排出する温室効果ガスの量を把握することが挙げられます。この記事では、企業がCO2排出量を算出する必要性、CO2排出量の計算方法、サプライチェーン排出量について説明します。製造業が注目すべき点についても専門的な視点から解説しています。

企業がCO2排出量を計算する3つの必要性とは

地球温暖化による影響がさまざまな地域で観測されるようになり、その影響は人々の生活にも影を落としています。このような状況を改善する手段として、カーボンニュートラルの推進が急務とされ、国内外や官民を問わず、さまざまな取り組みが行われています。

カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。温室効果ガスの「排出量」 を削減する取り組みと同時に、排出量から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引く取り組みを進めて、排出量と吸収量の合計を実質的にゼロにするという考えです。

カーボンニュートラルの推進には、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を減らす取り組みが不可欠であり、事業活動を通じて直接的・間接的に温室効果ガスを排出している企業にとっても無関係ではありません。まずは、なぜ企業がCO2排出量を算出する必要があるのか、その理由をみていきましょう。

(環境省「カーボンニュートラルとは」を加工して作成)

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1|法律による報告義務として

日本では地球温暖化対策の推進に関して、特定の事業者に対して温室効果ガスの排出量や使用状況を報告することが法律による義務として定められています。報告義務のある企業(事業者)は、法律に則って排出量を計算し、報告することが求められているのです。報告を義務付けている法律の概要を紹介します。

1-1【温対法】排出量報告

地球温暖化対策に取り組むための規定を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、2006年4月1日から、温室効果ガスを多量に排出する事業者を対象に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられています。国は報告された情報を集計し、公表しています。

対象となる事業者は、エネルギー起源CO2に関して全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者や、エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスにおいて温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000t以上、かつ、事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上の事業者です。

なお、温対法は2023年9月1日に改正が公布され、2024年4月1日に施行されます。温室効果ガス算定排出量の算定方法の見直しなどが行われ、「温室効果ガス総排出量」において都市ガス及び熱の使用に伴う二酸化炭素排出量の算定に用いる係数などが改められます。

温室効果ガスとは
温室効果ガスとは、大気中に含まれるCO2やCH4(メタン)、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどの総称です。温室効果ガスは大気中の熱(赤外線)を吸収する性質を持つため温室効果が強くなり、地表付近の気温が上がり、地球温暖化につながります。

klとは
L(リットル)の1000倍。1kl=1,000L
※1,500kl=150万Lに相当

(e-Gov「地球温暖化対策の推進に関する法律」を加工して作成)

(環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」「「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について」 を加工して作成)

1-2【省エネ法】エネルギー使用状況報告

「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」では、一定規模以上の事業者(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用)に、エネルギーの使用状況などを定期的に報告することが定められています。当初は、化石エネルギーの使用の合理化が求められていましたが、現在の状況に鑑み、2023年4月に省エネ法が改正。化石エネルギーだけに限らず非化石エネルギーも含めた全てのエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換を求めるとともに、電気の需要の最適化を促す法律となりました。

エネルギー使用者へ直接規制する事業分野は、工場・事業場及び運輸分野とされています。また、エネルギー使用者への間接規制として、製造事業者などには自動車や家電製品など32品目のエネルギー消費効率の目標を設定し、達成することが求められています。

(経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法の概要」「2023年4月〜 省エネ法が変わります」を加工して使用)

2|気候変動に関する情報開示の推奨を受けて

G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、企業に対して、気候変動がもたらすリスクや機会の財務的影響を把握し、開示することを提言しています。これは、気候変動が企業経営のリスクの引き金となることや、金融機関への悪影響を懸念して行われたものです。

TCFDに対しては、世界全体では金融機関をはじめとする4,872の企業・機関が賛同を示し、日本では1,470の企業・機関が賛同しています(2023年10月12日現在)

(経済産業省「日本のTCFD賛同企業・機関」を加工して作成)

3|企業価値の向上や市場での競争力強化

CO2排出量を計算・把握し、カーボンニュートラルを意識した企業の事業活動は、環境や世界情勢に配慮していることになり、企業価値の向上につながります。こうした動きは、投資家の間にも広がりを見せており、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」に配慮した経営を行う企業に対して優先的に投資を行う「ESG投資」が注目を集めています。ESG投資の対象となれば、さらに環境に配慮した経営を行うための投資が可能となります。市場での競争力強化にも大きく寄与するでしょう。

CO2排出量の計算方法〜CO2換算による計算式〜

ここからは、CO2排出量を実際に算出する方法として、CO2換算による排出量計算の方法を以下のステップでご紹介します。

  • Step1.排出活動の抽出を行う
  • Step2.活動ごとの排出量を算出する
  • Step3.排出量の合計値を算出する
  • Step4.排出量のCO2換算値を算出する

(以下、環境省「制度概要」を加工して作成)

Step1.排出活動の抽出を行う

温室効果ガスごとに定めた当該温室効果ガスを排出する活動のうち、事業者が行っている活動を抽出します。活動の種類については環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に、エネルギーの使用、燃料の漏出、工業プロセス、農業、廃棄物、HFC等4ガスに分類したものと、業種別に分けた種類が一覧表として載っています。
また、排出活動の抽出に当たっては、自ら行っている全ての活動が対象になります。例えば、自社が管理する設備を他社がメンテナンスする場合でも、管理の主体が自社であると判断し、活動の対象となります。

Step2.活動ごとの排出量を算出する

抽出した活動ごとに、基本的には以下の計算式で排出量を算定します。

温室効果ガス排出量 = 活動量 × 排出係数

活動量とは、生産量、使用量、焼却量など、排出活動の規模を表す指標です。排出係数とは、活動量当たりの排出量を指します。活動ごとの算定式及び排出係数は定められており、詳細については環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」で確認できます。

Step3.排出量の合計値を算出する

温室効果ガスごとに、Step2で算定した活動ごとの排出量を合算します。

Step4.排出量のCO2換算値を算出する

最後に、温室効果ガスごとの排出量をCO2の単位に換算します。計算式は以下になります。

温室効果ガス排出量(tCO2)= 温室効果ガス排出量(tガス) × 地球温暖化係数(GWP)

地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)とは、温室効果ガスごとの地球温暖化をもたらす程度のCO2との比を表すもので、温室効果ガスごとに異なります。例えば、CH4(メタン)は25、N2O(一酸化二窒素)は298のように定められています。数値の意味としては、CH4の25では、CH4を1t排出することは、CO2を25t排出することと同じということです。各温室効果ガスの地球温暖化係数については、環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を参照してください。

なお、地球温暖化係数については、法律の改正に伴い見直しが行われ、2024年度の報告から数値が更新されます。一例として、CH4は25から28、N2Oは298から265に変わります。詳しい情報は、環境省の「制度概要資料」をご覧ください。

サプライチェーン全体でCO2の排出量を把握するには?

CO2の排出量については、自社での排出量算出のほかに、サプライチェーン排出量という考え方もあります。

サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった、一連の流れ(ライフサイクル)のことです。「サプライチェーン排出量」は、製品に加えて組織のサプライチェーン上の活動に伴う排出量を算定対象とする考え方であり、資本財・出張・通勤などの事業者の組織活動全体を対象とした温室効果ガス排出量を意味します。

(環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」「サプライチェーン排出量算定の考え方」を加工して作成)

サプライチェーン排出量の構成

サプライチェーン排出量は、Scope1、Scope2、Scope3から構成されており、Scope3はさらに、15カテゴリに分類されます。

Scope1 : 自社による温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。15カテゴリに分類される

サプライチェーンの流れとして、以下のように上流と下流に分けて考えます。

上流:原則として購入した製品やサービスに関する活動
下流:原則として販売した製品やサービスに関する活動

サプライチェーン排出量の計算方法

サプライチェーン排出量は以下のように算出されます。

サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量

Scope1とScope2の排出量は、活動量×排出係数で算出できます。

Scope3は基本式「活動量×排出原単位」を15カテゴリごとに計算し合計して算定します。排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことを指します。例えば電気1kWh使用あたりのCO2排出量、貨物の輸送量1t-kmあたりのCO2排出量、廃棄物の焼却1tあたりのCO2排出量が該当します。

t-km(トンキロ)とは
貨物の輸送量を表す単位
t-km=貨物の重量(t)×貨物の輸送距離(km)
※1t-km=1tの貨物を1km運んだ場合の輸送量

CO2排出量の計算サイト〜ツールにエクセルを使用〜

経済産業省では、エネルギー利用環境負荷低減事業適応関連事業として、事業適応計画サイトにてエクセルによる「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」を提供しています。利用にあたってはマニュアルが掲載されています。計算ツールの一つとして利用してみてはいかがでしょうか。

【製造業注目】温室効果ガス排出量の計算・把握が企業成長のカギ

CO2をはじめとする温室効果ガス排出量を計算し把握することは、これからの企業経営には欠かせません。全ての業種において取り組むべきことですが、中でも製造業が取り組む意義は大きいと言われています。その理由について解説します。

ビジネスソリューション事業部
第2営業部 エキスパート

中尾 太郎

2016年入社。20年に渡り、製造業を主要な顧客とし、生産管理パッケージの導入営業を担当しています。幅広いお客様に対応し、多くの経験を積み、製造業における深い専門知識を獲得しました。お客様からの信頼は非常に厚く、それは長いお付き合いと卓越したサービスの証です。
また、自社パッケージの製品戦略やマーケティングにも深く関与し、会社の成功に貢献しています。製品の方向性を見極め、市場の変化に柔軟に対応することで、競争力を維持しています。
今後もお客様と協力し、最適なソリューションを提供し続けます。

なぜ製造業が注目?

製造業は温室効果ガスの排出が多い業種です。温室効果ガスの一つであるCO2の排出量をみてみると、2021年度の日本での排出量は10億6,400万tでした。排出を部門別でみると、製造業を含む産業部門が35.1%と最も多くなっています。産業部門の排出量の変化をみると、2013年度比は−19.5%でしたが、前年度比は+5.4%と増加しています。

国として、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言している中、製造業としてもカーボンニュートラルに向け、業界全体で削減に取り組むべき意義は大きいと言えます。

(参考:環境省 脱炭素社会移行推進室、国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要」)

なぜ排出量を把握する必要がある?

排出量を計算・把握し、その結果を調達活動の見直しや他社との連携、CSR情報の開示などの事業活動に反映させることが大切です。「企業がCO2排出量を計算する3つの必要性とは」でも記されていますが、企業価値向上や市場での競争力強化につながります。

また、サプライチェーン排出量を算出することで、サプライチェーン上で優先的に削減すべき排出源を特定できます。排出割合の高い項目から削減対策をすることは、結果としてコスト削減にもつながり、生産性アップも見込めます。

温室効果ガスの製品別排出量が比較可能!生産管理システム「ProAxis」

温室効果ガス排出量は、活動量や排出係数、地球温暖化係数が細かく定められているため、簡単に計算できるわけではありません。そこで、排出量の計算にあたっては、生産管理システムを活用するのも一つの方法です。ここでは、キッセイコムテックが開発・販売している生産管理システム「ProAxis(プロアクシス)」をご紹介します。

キッセイコムテックのオリジナル製品「ProAxis」は、現場ニーズを重視し、「適応性」「操作性」「柔軟性」を兼ね備えた生産管理システムです。

ProAxis」の特徴の一つとして、カーボンニュートラルへの取り組みをサポートする機能を搭載しています。製品の原材料や配送ルートから、生産設備内で排出した温室効果ガス、製品の使用や廃棄にかかる温室効果ガスを、Scopeごとにデータベース化。排出量を登録・集計することで製品に関わる温室効果ガスの種類とその排出量を求めることができます。CO2をはじめとする温室効果ガスの製品別排出量比較が可能となるため、カーボンニュートラルに向けた取り組みを数値で評価できます。

ProAxis」の導入にあたっては、「安心のOne Stop Service」体制を整えており、万全なサポート体制でお客様をバックアップいたします。

「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」

CO2排出量を計算し、カーボンニュートラル実現へ。できることから始めよう

持続可能な社会へ向け、カーボンニュートラル実現への動きは世界共通の重要案件です。今こそそれぞれの企業で、自分たちができることを最大限に進めていく必要があります。その一つの方法として、CO2排出量を計算し把握することは大事な取り組みと言えるでしょう。排出量を把握し、活用することは企業にとってもメリットがあります。ぜひこの機会にCO2排出量の算出・活用について考えてみませんか。

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