予防保全とは?種類やメリット・デメリット、他の保全との違いについて解説

予防保全とは?種類やメリット・デメリット、他の保全との違いについて解説

企業の生産性を高めるために重要となるのが、機械や設備が不具合を起こす前にメンテナンスする予防保全です。この記事では予防保全の意味や重要性、種類を解説します。近年ますます重要性・活躍の場を増しているIoTやAI技術を活用した予知保全についても説明します。保全業務にお悩みを抱えている企業の方や効率化を目指す方の参考にご覧ください。

予防保全(PM)の意味

予防保全とは、定期的な保全業務により機械・設備のトラブルを回避し、安定的な稼働を目指すことを意味します。英語では、Preventive Maintenanceと表記され、略してPMとも呼ばれます。

事後保全との違い

保全には、予防保全の他に事後保全(BM:Breakdown Maintenance)があります。事後保全とは、機械や設備の故障・不具合といったトラブルが起こった段階で対処する方法です。つまり、予防保全とは保全のタイミングが異なります。事後保全はトラブル後、予防保全はトラブル前に保全を行います。

予防保全と事後保全

事後保全はトラブル後の対応となるため、故障が発生しますが故障予防のためのコストはかかりません。ただ、トラブルが発生すると修理のために製造現場の生産を止めなければならず、生産が計画通り進まないことが懸念されます。

【予防保全の重要性】維持管理・更新費が30年後に約50%減少〜国土交通省の試算〜

予防保全活動は年々重要性を増しており、国土交通省のインフラメンテナンスでも注目されています。インフラメンテナンスにおいて、これまで実施されていた事後保全と比較した「平成30年度推計」では、5年後、10年後、20年後で維持管理・更新費が約30%減少し、30年後には約50%減少すると試算。予防保全が長寿命化などによる効率化に効果があるとし、持続的な取り組みが期待されています。

(国土交通省「予防保全の促進に向けた取組(インフラメンテナンス)」 を加工して作成)

予防保全の種類

予防保全にはいくつか種類があります。主な種類について説明します。

1|時間基準保全(TBM)

時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)とは、故障の有無に関係なく、時間を基準にして定期的にメンテナンスを行う予防保全です。

時間基準保全

ポイントは定期メンテナンスをどのくらいの間隔で行うかという点です。期間が長すぎれば予防する前にトラブルが起こる可能性が高まります。一方で、期間が短すぎればトラブルが起こることは少なくなりますが、運用コストが嵩んでしまいます。適切なメンテナンスの間隔を設定することで、トラブル防止とコストの最小限化が望めるでしょう。

2|利用基準保全 (UBM)

利用基準保全(UBM:Usage Based Maintenance)とは、設備・機械の累積稼働時間や回数を基準にメンテナンスを行う予防保全です。

利用基準保全

どのくらいの累積稼働時間や回数でメンテナンスを行うのか見極めるために、利用状況を記録・モニタリングし、基準となる利用量を適切に決めなければなりません。1日当たりの平均利用量をもとに適正なタイミングを算出し、メンテナンス時期を決定します。

3|状態基準保全(CBM)

状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)とは、設備の状態を定期的に点検し、そのままの状態で利用することにより故障や不具合が考えられる場合に対象部品を修理したり、部品交換をする予防保全です。

状態基準保全

一定期間や累積稼働時間・回数を設けるわけでなく、設備や部品の状態を確認した上で限界値に近ければメンテナンスするため、不要な交換や修理を防ぎ、コスト削減につながります。

4|信頼性中心保全(RCM)

信頼性中心保全(RCM:Reliability Centered Maintenance)とは、故障データを収集し、故障の発生過程や発生しやすい箇所、故障の検知方法などのデータを整理し、保全の対象とする機器を決定する予防保全です。故障について解析した上で、最適な保全方式を選択し、適用します。

機器について深く調査して機器の信頼性を高め、いくつか考えられる保全の中から信頼性に応じて効果的な手法を選び出すことがポイントとなります。

予防保全のメリット

予防保全のメリットをみていきましょう。

〈メリット1〉生産品質の維持

予防保全を行うことにより、トラブルが生じる前に不具合に対するメンテナンスができるため、不具合による製品の品質低下防止・品質維持に役立ちます。

〈メリット2〉ダウンタイムの最小化→生産性の向上

機械や設備が故障してしまうと、その設備は修理が完了するまでの間、一時的に生産をストップさせなければなりません。部品の取り寄せやメーカーによる修理となると修理期間が長くなり、稼働停止が長期化する恐れがあります。一方、予防保全を適切に行えば、稼働を停止させる故障を事前に防ぐことが可能です。予防保全によるダウンタイムの最小化は、生産性向上につながるでしょう

〈メリット3〉設備や機械の長寿命化

機械の一部分が壊れることで、設備全体の稼働が不可能になることもあります。予防的なメンテナンスを行うことで、機械が完全に壊れるのを防げるだけでなく、寿命を延ばすことにもつながります。一つひとつの予防保全が設備全体の長寿命化を支えると言ってもよいでしょう。

〈メリット4〉保全計画が明確

定期的なスケジュールや累積稼働時間・回数を基準にメンテナンスを行う予防保全は、突発的な故障に対応するわけではないので、予め保全計画が立てやすい方法です。保全要員の配置にも余裕が生まれ、保全部門の人件費削減にもつながります。

予防保全のデメリット

予防保全には少なからず課題もあります。

〈デメリット1〉オーバーメンテナンスの可能性

予防保全は、メンテナンスのタイミングではまだ使える部品でも交換してしまう可能性があります。交換する部品の費用や資源の有効活用という観点からは、課題があると言えるでしょう。

〈デメリット2〉定期的な作業による工数の増加

予防保全は、事後保全のように壊れたタイミングではなく予防として保全を行うので、どうしても作業の回数が増えてしまいます。これもデメリットの一つとして挙げられます。

【デメリット解消】予防保全から予知保全へ

予防保全のデメリットを解消する保全として注目したいのが、予知保全(PdM:Predictive Maintenance)です。予知保全とは、予め定めた時間や累積回数といった定期的な保全スケジュール、故障が起こった後ではなく、トラブルが起きそうな予兆を見逃さずに保全する方法で、予兆保全とも言います。

予防保全と予知保全の違い

予防保全と予知保全は、トラブルが起こる前にメンテナンスを行う点は両者とも同じですが、予知保全はIoT技術を活用して故障の兆候をキャッチしたらメンテナンスを行うという点が異なります。予知保全は、不具合による修理で稼働を止めることなく、しかも機械や設備にとって故障する寸前の最適なタイミングで行えるのです。保守部品在庫についても、計画的な管理ができます。

予知保全のカギはIoTやAI技術の活用。より進化した保全へ

予防保全のデメリットを解消する予知保全は、IoTやAIの技術の活用が欠かせません。IoTや機械学習といったAIの技術がどのように活用されているのか、キッセイコムテックの山田高志が解説します。

【ポイント1】データを収集・蓄積できる

IoT技術を活用すれば、保全計画のベースとなるデータを収集・蓄積できます。IoT(Internet of Things)とはさまざまなものがインターネットによってつながることで、遠隔でデータ取得や管理、機器同士の連携が可能になる技術です。

IoT化することで、例えば工場の生産ラインでの24時間稼働データや製造履歴データ、インフラ設備での振動変化データなどが収集・蓄積できます。

【ポイント2】データを解析し、予兆の段階で対応できる

AI技術(機械学習の実装など)を使えば、収取・蓄積したデータを解析し、予兆をキャッチできます。つまり、すぐにメンテナンスをするべきか否か、どのようなメンテナンスが必要なのかなど、実際に不具合が起こる前の保全が可能となります。

これまでは、データの裏付けがなくても保全担当者の経験値による判断で部品を交換するなど、保全業務が一律でなかったり精度に欠けたりすることがありました。しかし、IoTやAI技術を取り入れることで、適切な判断により予兆の段階で安定した保全が望めます。つまり、経験者に頼らなくても、高い精度で予知し、効率的な保全が可能と言えます。

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予知保全推進なら「AxisBase」がおすすめ。IoT機能も装備

予防保全の推進に、システムの導入をお考えなら、キッセイコムテックが手掛ける「AxisBase」がおすすめです。お客様の要望に応じて管理システムを構築でき、IoT機能の装備も可能です。最新のITを駆使したセミオーダー型でシステムを構築していくので、お客様にとって利便性の高いシステムが実現できます。テンプレート機能を活用し、「高品質」「低コスト」「短納期」なシステムで、お客様のお悩みを解決します。

セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現

企業の課題解決のためにも、IoT技術などを取り入れた保全を

生産性を高めるためには、無駄がなく精度の高い保全が大切です。適切な保全を推進する課題として多くの企業が掲げるのが、保全コストを削減しながら設備の稼働率を高める点です。この課題を解決・改善するためには、IoT技術などの先進技術を取り入れていくのがカギとなります。IoT活用が搭載された保全管理システムとも連携しながら、適切で高度な保全を進めていきましょう。

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