MRP(資材所要量計画)とは?効果的な資材管理手法をわかりやすく解説!
製造業でよく目にするMRP。在庫の管理や発注作業の効率化に貢献しますが、具体的な活用方法などイメージしにくい方もいるでしょう。「最適なMRPの計算方法が知りたい」など、効率的な作成方法について詳しく知りたい方もいるかもしれません。
今回は、MRPの意味やメリットなど基本情報から、MRPの計算方法や課題解決といった現場で活用できる内容まで幅広くご紹介します。MRPの作成や管理に便利な生産管理システムについてもご紹介しますので、自社の生産性向上にお役立てください。
MRP(資材所要量計画)の意味とは?
MRPとは、「Material Requirement Planning」の略語で、日本語では「資材所要量計画」を意味します。生産管理手法の一つとして、生産管理システムに組み込まれている場合が多く、販売管理や工程管理などと連携させて管理する方法が一般的です。では、実際に製造業においてどのような機能を果たすのか、MRPの役割や重要性を見ていきましょう。
MRPの役割
MRPが担う役割をわかりやすく説明すると、「どの部品を」「いつまでに」「どのくらい」用意すればよいかを明確にし、製造プロセスの設計を行うことです。製造業に必要な生産管理を、効率的かつ適切に行うためには欠かせないツールの一つとなっています。
MRPのメリット・重要性
MRPは、需要に対して適正量を供給するために必要な在庫を可視化し、そこから逆算して生産現場で必要な動きを考えます。MRPに沿って生産や在庫管理を行うことで、人員や設備などのリソースを効率的に運用できるでしょう。
MRPがなければ過剰在庫を抱えたり、材料不足で生産ラインがストップしたりといった混乱が起こりやすく、人員や設備、手配した部品などにもムダが発生します。限られたリソースを効率的に活用し、生産性を向上させるためにもMRPは重要です。
MRPとJIT(ジャストインタイム方式)の違い
MRPとJITは、どちらも生産管理のアプローチ手法です。ただし、根本的な考え方が異なります。MRPが、生産計画に沿って、必要となるであろうタイミングにあわせて材料を用意するのに対し、JITは実際に必要になったタイミングで材料を手配します。
製品の内容によって、どちらか一方の手法を採用するケースや、2つを適切に組み合わせて運用する場合もあるでしょう。
MRPと「MRP2」「ERP」の関係性
MRPと関連性の高い「MRP2」と「ERP」。1970年代に生まれたMRPは1980年代に入るとMRP2へ、さらに1990年代にはERPへと進化し、効率化の対象範囲もより広く考えられるようになりました。MRP2とERPそれぞれの用語について、詳しく見ていきましょう。
MRP2とは
MRPが「資材所要量計画」を意味するのに対し、MRP2は「製造資材計画」を意味します。管理する範囲が、資材から製品を完成させるまでの製造プロセス全体に広がったもので、MRPの拡張版と捉えることができるでしょう。生産能力にも目を向け、人員や設備、物流の計画・管理なども行います。
ERPとは
ERPは「Enterprise Resources Planning」の略で、「企業資源計画」を意味します。人員や設備、資金、データといった社内の全リソースを一元的に管理する手法で、生産管理で活用されてきたMRPを、企業経営の効率化を目的に展開したものです。点在している情報を集め、そこから企業状況を迅速に把握できる仕組みのため、現場から経営トップまでスムーズな情報共有が可能です。経営管理の中枢を担うシステムとしても導入されています。
MRPの計算方法。計算に必要な3つの要素
ここからは、MRP計算に必要な3要素をご紹介します。
1.生産する製品の数(MPS:基準日程生産計画)
製品の生産量や、生産時期を定めたものを「MPS(基準日程生産計画)」と呼びます。MRPの計算にまず必要となるのが、このMPSです。日々変わる受注状況や、販売状況などから「どの製品を、いつまでに、いくつ必要か」を把握し、これらの情報を計画に反映させ、精度を高めておく必要があります。
2.製品の構成・部品ごとの必要量(BOM:部品表)
MRPは、マスタ情報から計画手配を行います。このマスタ情報となるのが、製品に使う材料を一覧にしたBOM(部品表)です。BOMでは、製品を造るために必要な部品の種類と量を洗い出しておきましょう。スケジュールにあわせて、一つひとつの部品を手配する時期なども記載し、実際の状況に合わせて見直しておくことが重要です。
【関連記事】BOM(部品表)とは?効果的な管理方法やシステム活用のメリット
3.在庫数
MRPを効果的に運用したい場合、最も重要な要素となるのが正確な在庫数です。部品の手配では、既にある在庫の分を差し引いて発注する必要があります。すでに手元にあるもの、発注済みのものなどを把握した上で発注数の調整を行い、在庫の最新状況を確認できる状態にしておきましょう。
製造業におけるMRPの課題と解決策
MRPを最適化するには、次の3つの課題について対策しておくことが必要です。課題の内容と解決策についてご紹介します。
<課題1>在庫運用を正確に行うのが難しい
前述の通り、在庫管理はMRPにおいて重要な要素です。在庫状況を考慮して部品の必要な量を計算するため、正確な在庫状況が把握できていないと、誤った数量がそのままMRPにも影響してしまいます。
日々変わる在庫状況を正確に把握するためには、情報管理の一元化など根本的な環境整備が必要となるでしょう。「在庫の入出庫情報をリアルタイムに行う」「棚卸の頻度を見直す」などの工夫も有効です。
<課題2>適切なリードタイムが見極めにくい
リードタイムとは、着手から完了までにかかる各工程の所要時間を指します。MRPは、納期などから逆算して製造プロセスを設計するため、リードタイムが実際と異なると、計画にも大きなズレが生じてしまうでしょう。MRP作成後も、現場の進捗状況にあわせて見直すことが重要です。
<課題3>部門間での情報共有に手間がかかる
MRPを活用するためには、計画変更や製品の納期変更などがあった際に早急に対応する必要があります。そのためには、スムーズに部門間で情報共有がなされる環境づくりが不可欠です。しかし、在庫状況を知る上で重要なBOMが、部門によって異なるルールで運用されているケースも少なくありません。MRPの要素となる情報が、企業全体で統一したルールで管理されている状況にすることが望ましいでしょう。
このように、MRPを最適化するためには、社内の状況を正確に把握することが前提条件です。そのためには、スムーズな情報共有を行うためのデータ管理の一元化がポイントとなりますが、それを実現するのが在庫や計画などを見える化する「MRPシステム」です。次では、MRPシステムについて詳しくご紹介します。
MRPシステム導入によるメリット
MRPシステムは、計算や管理を効率的に行うことができ、タイムリーな情報更新をサポートするITシステムです。MRP管理にかかる労力やタイムリーな情報更新の難しさなどの課題を解決し、生産性向上に貢献するMRPシステムは、さまざまな企業で活用されています。MRPシステムの4つのメリットをご紹介します。
生産の効率化
MRPシステムは、人が行う作業をITが補助してくれるため、必要な部品の量や手配のタイミングを正確に計算することができます。見落としや入力間違いなど人的ミスを抑制し、コストを最小限に抑えられるといったメリットがあるでしょう。
在庫の最適化
さまざまな関連データから最適な在庫の量を簡単に算出することも可能です。過剰在庫や在庫不足などといった問題の解決にも、MRPシステムは役立つでしょう。
納期の遵守
MRPシステムは、変更事項の反映なども管理しやすく、運用をサポートする機能もあります。適切な生産管理が行えるため、ムダのない安定的な稼働が可能となり、納期の遵守にも貢献するでしょう。
生産計画の見える化
さまざまな情報を連携させて管理し、現場状況を把握しやすくしてくれるのも大きなメリットです。余っている資材を足りないところへ回すなど、全体を俯瞰した適切なマネジメントにも役立つ機能となるでしょう。
MRPの計算が可能な「生産管理システム」もおすすめ!
MRP管理だけに特化したシステムもありますが、特に製造業ではMRPを組み込んだ生産管理システムを活用する方法もおすすめです。より広範囲の効率化が実現でき、社内の環境改善に大きく貢献することが期待できます。
生産管理システムとは
生産管理システムは、設計や製造、購買など生産に関わる部門で扱う情報を一元管理し、ITを活用した自動化など便利な機能を備えたシステムです。MRPやBOMも組み込まれており、このシステム一つで基幹業務のマネジメントができるでしょう。
生産管理システム「ProAxis」導入のメリット
生産管理システム「ProAxis」は、製造業における生産管理に最適なソリューションです。実際どのようなことに対応できるのか、製品の特徴をご紹介します。
ProAxisはMRPも管理できる統合型システム
生産管理システム「ProAxis」は、MRPによる所要量計算やスケジュールの立案などの機能も備えた「統合型システム」です。多階層で複雑な部品表データから所要量を求める作業も、簡単に行うことができます。
受注や各ラインの進捗状況など社内の状況をリアルタイムで把握でき、MRP管理の最適化にも役立ちます。また、日程計算では、余剰在庫の発生を低減させるロジックを採用しており、リソース配分の見直しや、コスト削減を支援します。
一つのシステムで管理できるのが最大の強み
標準マスタからのMRPに基づく受注生産/見込生産運用はもちろんのこと、製番BOM運用による個別受注生産にも「ProAxis」1システムで対応(ハイブリッド生産管理)が可能です。製品によって生産方法が異なる場合も、一つのシステムで対処できることは大きなメリットでしょう。
現場でも導入しやすい操作性も魅力
弊社では、課題の掘り起こしや分析から本稼働後の運用までサポートしますので、初めてITシステムを導入するお客様にも安心してお使いいただけます。また、「ProAxis」は使い勝手を重視したシステムで、マスタはシンプルな構成のため、導入時の課題となる社員への教育コストも、最小限で済ませることができるでしょう。
カスタマイズができる「ProAxis」は、ご要望に合わせて柔軟なシステムの構築が可能です。課題解決や新たな事業展開も見据えて最適なシステムの基盤づくりをサポートいたします!
「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」
IoTとの連携やAIの活用も。MRPの将来展望は?
MRPを含めた生産管理システムは、loTやAIの活用したさらなる業務の省人化や効率化が期待されています。例えば、生産ラインに取り付けたデバイスで現場の情報を自動的に収集し、進捗状況や分析結果を可視化するといったことも期待できるでしょう。
また、在庫にあわせた生産ラインの制御といったことも、loTやAIによって自動化することが可能となるかもしれません。IoTやAI活用といった将来の展望も踏まえると、生産管理システムを導入しIT活用の基盤を作っておくことが重要です。
MRPは効率的な生産計画のカギ!
製品の必要量から逆算して製造プロセスを設計するMRPは、在庫を適正化し、効率的に生産管理を行うために重要です。ただし、MRPを効果的に活用するには、製品の生産計画や必要な部品の量のほか、在庫状況も加味したデータをMRPに落とし込むことが求められます。複雑な計算をサポートする生産管理システムなどを用い、効率的にMRPの計算や管理を行えば、社内の業務スピードも大きく変化することが期待できるでしょう。この機会に生産管理システムを活用した環境整備も視野に入れて、検討してみてはいかがでしょうか。