在庫管理とは?基本的な知識から進め方、効率化する方法まで徹底解説!
在庫管理とは、保管している在庫の数量や状態を適正に管理することです。適切な在庫管理が欠かせない製造業では、重要な業務となります。しかし、「在庫管理を正確にできていない」「在庫管理の方法に課題を抱えている」といった実情をお持ちの製造業者もいるでしょう。この記事では、在庫管理の基本から、進め方や効率化の方法までご紹介するので、自社で在庫管理を行う際にお役立てください。
在庫管理とは?
在庫管理とは、自社で保管している在庫の数量や状態を適切に管理することです。必要なときに必要な分をすぐに供給できるよう在庫を維持することで、無駄なコストや機会の損失を防ぎ、企業の利益向上に貢献できるようになります。製造過程により在庫状況の変動が大きい製造業では、正確な在庫管理の実施は重要な業務といえます。
製造業における「在庫」が何を表しているか、詳しくみていきましょう。
製造業で管理する「在庫」
製造業で管理する在庫は、生産を行うために仕入れたもので、製品化される前のものも含まれます。在庫の種類は、製造工程に合わせて「部品・原材料」「仕掛品」「完成品」の3種類があり、それぞれの意味は次の通りです。
部品・原材料 | 外部業者から仕入れる在庫 「部品」:そのまま使用するもの 「原材料」:加工が必要なもの |
仕掛品 | 加工や組立てをする製造過程で作られる販売できない状態の在庫 |
完成品 | 顧客に販売できる状態の在庫 |
在庫管理はなぜ重要なのか?
在庫管理を適切に行うことによって、以下の効果が期待できます。
- 適正在庫の確保によるコスト削減
- 業務効率・生産性の向上
- キャッシュフロー改善
- 生産計画の最適化
- 品質管理
- 企業利益の向上
- 顧客満足度の向上
徹底した在庫管理を行うことで、「在庫不足による機会損失」や「管理業務の工程数削減による負担軽減」、「余剰在庫の処分や生産ライン停止の防止」などにつながります。結果、業務効率化や顧客満足度が向上し、収益に大きな影響を与えるでしょう。このように、適切な在庫管理を行うことは、事業の成長や競争力の強化には欠かせません。
在庫管理の方法
適切な在庫管理を行う方法を、4つのステップでご紹介します。
1.在庫の種類と数量を把握する
まず、在庫状況を把握するために、自社の在庫の種類と数量を確認します。方法としては、「棚卸」や「入出庫管理」などがあります。
棚卸は、自社で保管している在庫を一つ一つ数えて記録する方法です。保管している数量を正しく把握できるというメリットがある一方で、時間や労力がかかることや棚卸の間、工場の稼働を停止しなければいけないというデメリットもあります。
入出庫管理は、入庫した在庫・出庫した在庫の数を管理する方法です。「いつ、なにが、どれだけ」出入りしたか記録していくため、工場を稼働させながらできますが、人的ミスが起こりやすいことが懸念されます。
2.適正在庫を設定する
適正在庫とは、欠品にも過剰にもならない適正な在庫数のことで、最小値と最大値を定めて管理します。在庫数が多すぎるとキャッシュフローを圧迫し、少なすぎると欠品リスクが高まるため、適正在庫の設定は重要です。
出荷数の平均やばらつき、在庫の入れ替えの頻度、需要予測などを考え、常に過不足のない状態に維持できることが理想です。適正在庫の維持は、販売機会を逃さず、保管スペースやコストを減らし、企業に最大限の利益をもたらすことにつながります。
適正在庫の設定方法は以下の記事で詳しく解説しています。適正在庫の設定に課題をお持ちなら、あわせてご確認ください。
【関連記事】適正在庫とは?5つの計算方法や考え方のコツ、在庫状況の改善策など
3.適した発注方式を定める
設定した適正在庫の維持には、ルールを決め、状況に合った発注方法を選択することが重要です。発注方法には、「定量発注方式」と「定期発注方式」があります。
- 定量発注方法:決められた在庫量を下回った時に一定在庫を発注する
- 定期発注方法:一定の間隔でその時に必要な数量を発注する
定量発注方法は、発注の手間が少なく、品目が多くても対応しやすいのが特徴です。比較的安価なものや供給が安定したものの発注方式に適しています。
一方、定期発注方法は、定量発注よりも手間はかかるものの、需要の変動に対応しやすいのが特徴です。そのため、高額なものや需要の変動があるもの、重要度が高く会社の利益に影響を与えやすいものの管理に向いています。
予測した需要に対して、生産する製品の数量や種類を決定し、そのために必要な部品等の在庫数や発注時期を決めるといった管理が必要です。自社の製品や売れ筋などを考慮し、状況に応じて発注方式を使い分ける必要があるでしょう。
4.PDCAを回しながら在庫を管理する
予測した需要は、必ずしも当たるとは限りません。予測が外れ、急に在庫が足りなくなるといったリスクも伴うため、適正在庫を保つことは製造業者にとって大きな課題の一つでしょう。予測が外れた場合、その原因を追求し、設定した適正在庫を再検討していく必要があります。また、スムーズに運用できていたとしても、急にどこかで問題が生じる可能性もあるでしょう。そのため、定期的にPDCAサイクルを回しながら在庫管理の最適化を行うことが重要といえます。
※PDCAサイクルとは
Plan(計画)・Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を並べたもので、フレームワークの一つです。4つの項目を循環させ、業務効率を改善させることが目的です。
在庫を「見える化」するには?
在庫の「見える化」とは、誰が見てもひと目で在庫状況が分かるようにすることです。見える化することによって、「過剰在庫や欠品の防止」「在庫管理コスト削減」「業務効率の向上」につながるため、在庫管理を行う上では最も重要といえます。
ここでは、在庫を「見える化」する方法をご紹介します。
エクセルなどで在庫管理表を作成する
在庫管理表とは、在庫の数や状態のほか、入荷〜移動〜出荷までの日時を把握するための表です。エクセルなどの表計算ソフトで作成することができ、「導入コストがかからない」「操作に慣れており使いやすい」「入力や管理が簡単」といったメリットがあります。
一方で、「幅広い管理には不向き」「データ容量に限界がある」「都度手入力する必要がある」などのデメリットも存在しています。また、データがリアルタイムに反映されないため、最新状況を把握しにくいことも大きな懸念点になるでしょう。
在庫管理システムを導入する
エクセルなどの管理は、コストを抑えられるなどメリットがある反面、デメリットも多く、活用する際に不便な点も多く生じるでしょう。そこで、在庫管理に特化した「在庫管理システム」の導入を行う場合があります。
在庫管理システムは、入出庫情報から在庫状況を一元管理できるシステムのことで、「手入力の手間を省ける」「リアルタイムで在庫状況を把握できる」「人的エラーを軽減できる」などの効果が期待できます。
バーコードやRFIDを活用する
他にも、バーコードやRFIDの活用も「見える化」する方法の一つです。RFIDとは、ICチップを搭載したタグを読み取り、製品を管理する自動認識技術を指します。これらを活用することで、入出庫状況や在庫の期限などの情報がリアルタイムに管理できるようになります。また、棚卸もバーコードやRFIDを読み取るだけの簡易作業となり、作業効率の向上も実現できるでしょう。
バーコードなどの情報と先述した在庫管理システムを連携させることで、より業務効率の向上が図れます。システムに商品情報を入力しておくことで、読み取ったバーコードと商品の情報をつなぐことができ、現場作業が標準化され、人的エラーの削減、データベース化などが可能です。
「見える化」についての詳しい内容は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】在庫管理の見える化を進めるには。メリットや方法、システム選びのポイント
在庫管理を改善・効率化するポイント
在庫管理業務の方法をいかに改善したり効率化したりするかは、製造業者にとって欠かせません。ここでは、在庫管理を改善・効率化するポイントを解説します。
在庫ロケーションの管理
ロケーション管理とは、倉庫内の在庫に住所をつけて位置を管理することで、管理方法には主に次の3種類があります。
- 固定ロケーション:在庫を固定位置に置く
- フリーロケーション:在庫の位置を決めず、状況に応じて移動させる
- ダブルトランザクション:固定ロケーションとフリーロケーションを組み合わせる
ロケーション管理を行うことで、在庫の所在を把握でき、管理が容易となるので、入出庫や棚卸などの業務効率の向上が可能になります。
在庫のクラス分け
在庫をクラス分けして、種類や数量を把握する方法も、在庫を管理する上での業務効率化につながります。方法の一つとして「ABC分析」が挙げられます。
ABC分析とは、在庫管理に優先順位を付けるために原材料や売り上げなどを分析する方法です。ランクごとにグループ分けをし、注力すべき製品をみつけたり、改善すべき問題を洗い出したりする指標となります。ランクの高いものを優先的に管理することで、企業の利益向上も期待できます。
在庫管理の難しさ。企業が抱える問題や課題とは
ここまで、在庫管理の重要性や効率化の方法をみてきました。しかしながら、実際に適切な在庫管理を実行することは難しく、「在庫管理の精度不足」や「在庫の過不足」などの課題を抱えている企業も多くあります。人による管理では、入力ミスが発生するなど正確さを欠いていたり、余計な作業が増えたりするリスクも避けられないでしょう。
また、在庫管理が難渋していると、正確な在庫を把握できず、過不足が生じることによる影響も考えられます。例えば、保管スペースの圧迫や在庫管理コストの増加などにより、キャッシュフローが悪化し、企業の経営に弊害を引き起こす可能性があります。
製造業なら「生産管理システム」の導入がおすすめ!
製造業特有の在庫管理における課題を解決する方法の一つに、「生産管理システム」の導入が挙げられます。先述した「在庫管理システム」は、在庫の適正管理に特化したシステムですが、生産管理システムでは製造業における業務を一元管理することができ、生産管理業務全体の効率化が期待できます。
生産管理システム「ProAxis」で在庫管理の課題を解決できる
キッセイコムテックが開発・販売している生産管理システム「ProAxis(プロアクシス)」は、工場の基幹業務を全てカバーできる統合型のシステムです。「見える化による適正在庫の確保」などの在庫管理機能に加えて、生産計画や原価管理などのデータ管理機能も備えています。これらの機能を並行することで、業務の効率化だけでなく、在庫管理の課題である「過剰在庫」や「欠品による機会損失」などの解決が期待できます。
「量産」にも「個別受注」にも対応できる生産管理・債権債務管理システム「ProAxis」
自社の業務プロセスにあった在庫管理方法を検討しよう
適切な在庫管理は、過剰在庫の削減や業務効率化などにつながり、利益向上や事業成長を実現できるため、製造業にとって重要な業務といえます。在庫管理の方法には、「在庫管理表の使用」や「在庫管理システム」などさまざまです。中でも、生産管理全体を網羅したい場合には「生産管理システム」の導入が適しているでしょう。適切な在庫管理のために、自社の業務プロセスに合わせた方法を検討してみてはいかがでしょうか。