DX推進における課題とは?課題ごとの解決策を分かりやすく解説
DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えている一方で、DX推進にあたってはさまざまな課題があり、思うように進まない企業も多いのが現状です。DXの課題は企業規模や業種などによって異なりますが、自社が抱える課題を正しく把握し、適切な対策を講じることがDX推進のポイントとなります。この記事では、日本のDXにおける主な課題と、解決策を解説します。
日本におけるDXの現状
総務省の「令和5年度版情報通信白書」によると、デジタル化(アナログな業務をデジタルに変えること)を「実施している」と回答した日本企業の割合は48.4%で、約半数の企業がデジタル化を推進していることが分かります。
一方、課題となっているのが、「どれだけ効果を実感できているか」です。「デジタル化の効果」について日本・米国・ドイツ・中国の4カ国で比較したところ、新規ビジネス創出や顧客体験の創造・向上などさまざまな面において、日本企業は「期待するほどの効果を得られていない」と回答した割合が、4カ国中最多でした。このように、日本でDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んでいる企業は多いものの、課題もまだ多くあります。
また、世界63カ国を対象に調査した「IMDデジタル競争力ランキング2022」によると、デジタル技術を利活用して競争する能力である「デジタル競争力」における日本の総合ランキングは29位でした。特に「デジタル・技術スキル」における評価は62位と非常に低く、DXに不可欠な分野で他国に大きく後れをとっていることがうかがえます。
(参考:財務省コラム 経済トレンド110『デジタル人材確保に向けて』)
DX推進における課題とは
多くの企業がDX推進に取り組んでいる一方で、さまざまな課題によってDX化が思うように進まない場合もあります。DX推進の主な課題として、次の3点が挙げられます。
- DX人材の不足
- ビジョンやDX戦略が不明確
- 老朽化したシステムの維持費が高額でDXにかける予算が不足
それぞれについて、見ていきましょう。
DXを推進できる人材がいない
第一に挙げられるのが、DXを推進できる人材の不足です。売り手市場が続く中、専門的なスキル・知識が要求される、プロジェクトのマネジメントができる人材やIT技術に精通している人材は、特に採用が難しいといわれています。また、IT関連の業務を外部に委託している企業も多く、社内で育成しようにも、必要なスキルや学習内容が分からないケースがあります。このように、DX推進においてIT人材確保は大きな課題の一つです。
(参考:独立行政法人情報処理推進機構/経済産業省『デジタルスキル標準』)
DXの目的や経営戦略が不明確である
DX推進は長期で取り組む大がかりなプロジェクトです。そのため、DXを推進する目的やビジョンがはっきりしないままDXを推し進めると、作業の自動化やIT教育など、一部業務のデジタル化のみで終わってしまう恐れがあります。
また、DXの目的や経営戦略が不明確であるために、経営陣・従業員の間で「企業文化の変革」や「大規模なシステム改修」への抵抗感が消えないことも、DX化が先送りになる一因と考えられます。
老朽化したシステムの維持費が高額でDXにかける予算が不足
DXにかけられる予算が不足していることも、日本でDXが進まない要因となっています。その一因が、本来不必要だった運用・保守費を支払い続ける「技術的負債」と称される、レガシーシステムにかかる維持費の高騰です。
「レガシーシステム」とは、老朽化・複雑化した既存システムで、多くは構築から20年以上が経過しています。度重なる部分改修や機能追加により構造が複雑化し、「高額な維持費」や「セキュリティーの脆弱性」といった問題を抱えているのが実情です。また、リリース当時を知る担当者が定年退職することにより、既存システムがブラックボックスと化し、システム維持に向けた知見の継承が難しいという側面もあります。
実際、経済産業省は、2018年9月に公表した「DXレポート 〜ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開〜」において、「老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムが、DX推進のための足かせになっている。」と指摘しています。
この技術的負債を多く抱えている企業では、DX推進のための予算を十分に確保するのが難しく、積極的な投資ができていないのが現状です。
(参考:経済産業省『DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』)
DX推進の課題を放置するリスク
DXの課題を解決しない場合、次のようなリスクが考えられます。
- レガシーシステムにかかるコストが高額になる
- システムのトラブルに対処できなくなる
- デジタル競争で敗北する
レガシーシステムは最新技術に対応できないため、メンテナンスコストが高額になりがちです。特に、メーカーの公式サポートが終了している場合、専門業者との高額な保守契約が必要となります。
また、追加や改修を繰り返して複雑化したシステムは、精通した技術者が退職すると、ブラックボックス化して対処できなくなる恐れがあります。メンテナンスが不十分なまま運用を続けると、「システムのダウンによる事業停止」や「セキュリティーの脆弱性を突いたサイバー攻撃」などにつながりかねません。
加えて、DXを実現できない企業は、デジタル競争で敗北する可能性が高まります。社会のデジタル環境は急速に変化しているため、ビッグデータやAIなどの最新技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革しなければ、企業として生き残れなくなる可能性もあるでしょう。
(参考:経済産業省『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』)
DXの課題解決のために企業がすべきこと
どのようなことに取り組めば、DXの課題を解決できるのでしょうか。ここではDXの課題解決に向け企業としてすべきことを、キッセイコムテックの山田高志が解説します。
- DXを推進できる人材を確保・育成する
- DX戦略を明確にして社内で共有する
- システムの分析・評価を行い、必要な変更や再構築を行う
- DXに対する予算を確保する
DXを推進できる人材を確保・育成する
DX推進には、システムを構築するエンジニアやプログラマーだけでなく、UXデザイン・データの分析や活用・プロジェクトをマネジメントする人材も必要です。そのため、自社に必要なDX人材を明確にして、不足している人材を獲得することが重要といえます。
しかしながら、デジタル技術やデータ活用に精通した人材は、獲得競争が激化しているのが現状です。自社採用ではなく、「業務請負会社やフリーランスのエンジニアなどへの外部委託」や「IT事業者からのDX担当者の派遣」「社内でのDX人材育成」なども検討するとよいでしょう。
自社で育成する方法としては、「既存システムの維持・保守を担当している従業員にDX分野の知識・スキルを習得してもらう」「社内でDX研修を行い、適性のある従業員を育成する」などがあります。また、新卒入社の社員を、DX人材として育成するというのも一つの方法です。
DX戦略を明確にして社内で共有する
DXは社内の各部署がかかわる長期プロジェクトであるため、従業員一人ひとりの理解を得るには、会社として進みたい方向を示す必要があります。DXを全社的に進めるためには、経営トップがDXを含めた経営戦略を打ち出し、社内で共有することが大切です。
「DXで何を実現するのか」「どのような価値を創造するのか」が社内に浸透することにより、スピード感を持ってDXを推進できるようになるでしょう。
既存システムの分析・評価を行い、必要な変更や再構築を実施する
自社のシステム刷新ありきではなく、まずは自社のシステムを分析して、現状を把握することも重要です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「以下の4つの観点で評価することが、出発点となる」としています。
●頻繁に変更が発生する機能は再構築
●変更が必要、または新たに必要な機能は適宜追加
●肥大化したシステムの中に不要な機能があれば廃棄
●あまり更新が発生しない機能は塩漬け
一度にシステムを変更するか、あるいは段階的に変更するのかは、現行システムの使い方によって異なります。4つの観点で評価を行い、どの範囲をDX化するか、廃棄する機能はあるのか、現行システムでそのまま使用するのかを、見極めることが大切です。
(参考:独立行政法人情報処理推進機構『DX実践手引書 ITシステム構築編 完成 第1.0版』)
DXに対する予算を確保する
DXを戦略どおりに進めるには、すぐ施策にとりかかれるだけの十分かつ柔軟性のある予算が必要です。予算調整が難しい場合は、小規模・小人数の「スモールスタート」で、低予算から始めるとよいでしょう。
IT関連費用の大半がレガシーシステムの維持費だという企業では、技術的負債を解決することでIT関連のコストを削減し、DXに予算を割くことが可能です。基幹システムの刷新にはある程度のコストがかかるものの、中長期的な視点で考えるとDX予算を確保しやすくなるでしょう。
DXを加速するならシステム構築サービス「AxisBase」
DXを加速するには、IT技術導入を事業変革につなげるための、システム刷新が欠かせません。そこでおすすめなのが、独自のテンプレートを使用したセミオーダー型システム構築ソリューション「AxisBase(アクシスベース)」です。「AxisBase」はテンプレート方式を採用しているため、ゼロから構築するよりも「高品質」を保ちつつ、「低コスト」かつ「短納期」で、企業それぞれの課題や目的に合わせたシステム構築を実現できます。顧客ニーズや社会環境の変化にも柔軟な対応が可能となり、ビジネスチャンスを創造する機会が生まれるでしょう。
優先度の高い項目から段階的に刷新することも可能なため、システムの老朽化・複雑化を無理なく解消しながら、DXを推進できます。DX化を円滑に進められるよう、「AxisBase」の導入をぜひ検討ください!
セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現
DX課題を解決して、スムーズにDXを進めよう
企業の競争力を高め、新たな価値を創造するための重要な取り組みであるDXですが、推進するにあたっては、人材不足や基幹システムの老朽化などさまざまな課題に直面する可能性があります。DX推進の課題を解決するポイントは、「経営戦略の明確化」や「レガシーシステムの刷新」「DX人材の育成」などを実行することです。自社に必要なツール・情報を取り入れて、DXを着実に推進していきましょう。