DXに失敗する理由。よくある失敗例や成功に導くためのポイントを紹介
近年、DXを推進している企業が増えてきているものの、その一方でDXに失敗していると感じている企業も多いようです。ビジネス環境の変化に対応しながら、企業として成長していくために必要なDXですが、なぜ失敗しやすいのでしょうか。今回は、DXのよくある失敗事例や企業がDXに失敗する理由、DXを成功に導くためのポイントを解説します。
そもそも「DXの成功」はどのような状態なのか?
DX失敗を懸念している企業の中には、「DXの成功とはどのような状態か」をイメージできていないケースもあるかもしれません。
そもそもDXとは、デジタルやITの技術を活用してデータを集約・分析し、既存のビジネスやプロセスに革新的な変化をもたらすこと。また、そのような変化の過程を「DX化」と呼びます。
(参考:デジタルガバナンス・コード2.0|経済産業省)
経済産業省が発表した「DXレポート2中間取りまとめ(概要)」では、DXを「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Degitalization)」「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の3段階に分解しています。
デジタイゼーションとはアナログ・物理データのデジタルデータ化のことで、デジタライゼーションとは個別の業務・製造プロセスのデジタル化のことです。また、デジタルトランスフォーメーションとは、組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革のことをいいます。
企業によっては、デジタイゼーションやデジタライゼーションをDXとして捉えているところもあるかもしれません。しかし、デジタルトランスフォーメーションの段階まで進んでいないと、既存のビジネスやプロセスに革新的な変化をもたらすことは困難です。そのため、デジタルトランスフォーメーションの段階を実現することが、DXにおける真の成功といえるでしょう。
【関連記事】DXとは?推進するメリット・事例・進め方をわかりやすく解説!
DXの現状。成果を実感している企業は1割未満
DXの成果を実感している企業は、1割未満といわれています。ここでは、2つの調査結果をもとに、日本企業におけるDXの現状を見ていきましょう。
DX白書2023
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)の「DX白書2023」では、「DXの取組内容と成果」を日米で比較したデータを公開しています。
「すでに十分な成果が出ている」「すでにある程度の成果が出ている」を合計した割合を見ると、デジタイゼーションに該当する「アナログ・物理データのデジタル化」とデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」については、日米で差はほとんどありません。一方で、デジタルトランスフォーメーションに該当する各取組内容の成果については、日米で大きな隔たりがあり、日本は米国ほどの成果をあげていないことがうかがえます。
日本企業の多くは、DXの成功に向けてなお道半ばの状況といえるでしょう。
DX推進指標 自己診断結果 分析レポート (2022年版)
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)の「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート (2022年版)」では、DX推進の成熟度レベルについての調査結果を公表しています。これは、経済産業省が示したDX成熟度レベルに基づくものです。
DX成熟度レベル
- レベル0「未着手」:経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない
- レベル1「一部での散発的実施」:全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている
- レベル2「一部での戦略的実施」:全社戦略に基づく一部の部門での推進
- レベル3「全社戦略に基づく部門横断的推進」:全社戦略に基づく部門横断的推進
- レベル4「全社戦略に基づく持続的実施」:定量的な指標などによる持続的な実施
- レベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」:デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
(出典:「DX推進指標」とそのガイダンス 」|経済産業省)
「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート (2022年版)」によると、回答した計3,956社のうち、「レベル1未満」であると答えた企業は1,977社(50.0%)と、ちょうど半数でした。「レベル1以上2未満」は1,213社(30.7%)、「レベル2以上3未満」は485社(12.3%)、「レベル3以上4未満」は256社(6.5%)、「レベル4以上」は25社(0.6%)となっています。
現状のDX成熟度レベル(回答数:3,956社)
DXの先行企業といえるのは「レベル3以上」とされていますが、レベル3以上の企業は1割弱です。多くの企業において、DX推進に向けた取り組みがいまだ「行われていない」または「部門単位での試行にとどまっている」ことがうかがえます。
半数以上の企業はDXの実現に向けた何らかの施策を行っているものの、なぜ1割弱の企業しか、DXに成功していないのでしょうか。このあとの章では、DXのよくある失敗事例や企業がDXに失敗する理由について、紐解いていきます。
DXのよくある失敗事例
DXのよくある失敗事例としては、以下のようなことがあります。
- デジタルツールを「導入しただけ」になっている
- DX推進について現場の従業員から協力を得られず、計画が頓挫してしまう
- DXの全体像を理解して推進できる人材がいない/資金不足で止まってしまう
- 社内の情報を集約しきれず、現状把握や計画が立てられない
「自分の会社でも、同じような状態だ」と感じられた方もいるかもしれません。このあとの章では、「なぜDXに失敗してしまうのか」や「どうしたら成功に導けるのか」を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
企業がDXに失敗する4つの理由
企業がDXに失敗してしまうには、単一の理由だけでなく、複数の要因が関係している場合もあるでしょう。DXの失敗理由として、以下の4点から必要な対策を考えていきましょう。
- DX推進ビジョンやアクションプランを設定できていない
- 社内横断的なコミュニケーションが不足している
- DX推進のためのリソースが不足している
- ブラックボックス化したシステムが足かせになっている
それぞれについて、見ていきましょう。
DX推進ビジョンやアクションプランを設定できていない
目的・目標やアクションプランをきちんと設定できていないことは、DXに失敗する要因といえます。「他社がDXに成功したようだから、自社でも取り組んでみよう」「とりあえずデジタル化を進めよう」というケースもあるかもしれません。しかしながら、DXの目標・目的といったDX推進ビジョンやその実現に向けたアクションプランを定めないまま進めてしまうと、単に従来の業務のデジタル化や効率化だけで終わってしまい、結果競合他社との差別化につながっていない、といったこともあるでしょう。
既存事業に革新的な変化や、他にはないサービスの付加価値化などができてこそ、DXの成功と言えます。業務のデジタル化を進める目的から、振り返ってみるとよいでしょう。
社内横断的なコミュニケーションが不足している
デジタル・ITに長けた人材や、すでにDXを進めた経験を持つ人材を社外から招くなどして、DX推進のための組織を編成している事例もあるでしょう。このような場合、DX推進の中心メンバーと、現場の従業員とのコミュニケーション不足に注意が必要です。社内の事情をよく調査せずに、変革のためと突然業務の方法を変更したり、システムを変更したりすることで、両者の間に軋轢が生じることもあるでしょう。
社内全体で協力が得られないと、DXはスムーズに進みません。変革の必要性やメリットを、現場目線の言葉で丁寧に伝える、現場からの声を吸い上げられる仕組みを整えるなど、全体が協力して進められるよう、体制を構築しましょう。
DX推進のためのリソースが不足している
DX推進は、企業全体として取り組むべき長期間におよぶプロジェクトです。そのため、DX推進のためのリソースを継続的に確保するのが難しいことも失敗の要因です。リソースが不足していると、「DXを推進したくても、思うように進められない」という状況に陥り、取り組みが中途半端な状態で頓挫してしまう可能性もあるでしょう。
リソース不足の具体例としては、「デジタル技術やデータ活用に長けたDX人材が社内にいない(いるものの人数が足りていない)」「DX推進のための予算を十分に確保できていない」などが考えられます。特に予算不足は、このあと紹介する「既存システムのブラックボックス化」とも関連します。
ブラックボックス化したシステムが足かせになっている
事業部ごと・部署ごとに異なるシステムを導入している場合、「どのような情報をどう管理しているのか」「どのような管理・運用に変えていくのが望ましいか」を社内全体で把握しきれていない可能性が高いです。
このように既存システムがブラックボックス化している場合、多くの時間とコストをかけて現状把握することから始めなくてはいけません。そのため、DXの成果を実感する前に、計画が頓挫し、失敗に終わる可能性があります。
DXを成功に導くための3つのポイント
DXを成功に導くためには、どのような点を意識するとよいのでしょうか。ここでは、DXを成功に導くためのポイントをキッセイコムテックの山田高志が解説します。
DX推進計画を策定する
DXを成功させるには、DX推進計画の策定が不可欠です。まずは、自社における「DXの定義」や「DX推進の目的」を定めることから始めましょう。「自社にとって、DXとはどのような変革がもたらされた状態のことか」「どういった目的で、DXを推進していくのか」といったDX推進のビジョンを明確に示し、社内の共通認識とすることが重要です。経営陣自らが「DXの必要性」や「DXによって得られる効果」などを示すと、より現場の従業員から協力を得やすくなるでしょう。
その上で、「5年後に◯◯の状態とする」「最初の1年間で、△△と▲▲を実施する」といった具体的な目標やアクションプランを考えます。計画どおりに進んでいるかを管理できるよう、KPIも設定しておきましょう。具体的な計画が見えてくると、予算の全体感が見通せるため、リソースを必要な箇所に計画的に配分する、人材育成プラン計画を策定する、といったこともしやすくなるでしょう。
なお、DX推進計画の策定にあたっては、DX化の段階的な実施を念頭に置くことも重要です。最初から全社的にDXを推進しようとすると、周囲の協力を得られなかったり、規模が大きすぎてうまくいかなかったりといった事態が想定されます。そのため、「一部の部門・部署」からスタートし、トライアンドエラーを繰り返したのち、「全社展開」するといった計画を立てるとよいでしょう。
DXを推進できる人材を確保・育成する
DXを推進できる人材を確保・育成することも、DXの成功には重要です。
DX人材が不足していてはDXが思うように進まないのは自明の理ですし、多くの企業がDX人材を欲しているという状況もあり、DX人材の獲得競争は激化しています。DX人材を中途採用しようと思っても、「応募が集まらない」「内定者が他社に就職してしまう」という事態に陥ることも考えられます。
そのため、DX人材の採用が困難な場合には、専門知識・スキルを有する外部企業との連携や、社内におけるDX人材の育成を検討すべきです。DX人材の育成にあたっては、将来的にDX推進でリーダシップを発揮してもらえるよう、従業員のデジタルスキルを中長期的に高めていくとよいでしょう。
また、DX人材の確保・育成と併せて、DXマインドを全社的に広める「旗振り役」となる部署を設け、DX推進体制を構築することも重要です。専門部署を設けることで責任の所在が明確になり、DX推進計画をより集中して進められるでしょう。ただし、失敗理由に挙げられたように、社内コミュニケーションを充実させることも忘れてはいけません。全体の理解を得ながら進めることが、成功のポイントです。
DX推進体制の構築方法としては、「経営層直下の部署として、DX推進部を設立する」「経営陣主導で、メンバーを選定・任命する」「各部門から数名ずつメンバーを募る」などがあります。「事業内容」や「従業員規模」「DX推進の背景」などを踏まえて、「どのような組織体制とすべきか」を検討しましょう。
レガシーシステムから脱却する
レガシーシステムとは、老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステムのことをいいます。レガシーシステムを抱えたままではデータを有効活用することが難しく、DXが思うように進みません。また、レガシーシステムを抱えたままでは維持コストが嵩み、DX推進のために十分な予算を継続的に確保するのが難しいでしょう。そのため、DXを成功に導くためには、レガシーシステムからの脱却が必要です。
レガシーシステムからの脱却方法は、大きく分けて「マイグレーション」と「モダナイゼーション」の2つがあります。マイグレーションとは、既存システムから新たなシステムへと移行することです。モダナイゼーションは、刷新によりシステムを最適化することを意味します。
マイグレーション/モダナイゼーションを円滑に進められるよう、実施に先立ち、手順や進める際のポイントなどを押さえておきましょう。
【関連記事】企業がDX推進を成功させるには。課題や推進の5ステップ、ポイントを押さえて紹介!
DXの失敗事例を踏まえて、万全を期そう
DXを成功に導くためには、「DX推進計画を策定する」「DXを推進できる人材を確保・育成する」といったポイントを押さえることが重要です。自社にとってのDX成功を定義し、万全の体制で臨みましょう。
キッセイコムテックでは、お客様のDX基盤を構築するソリューション「AxisBase」を提供しています。各種テンプレート機能をベースに、お客様のニーズにあった形にカスタマイズした実装が可能です。セミオーダー型のため、システム構築のコスト削減やスピーディーなシステム構築を実現できます。「これからDXを推進したい」「DXの前段階としてシステムを刷新したい」などのニーズをお持ちでしたら、「AxisBase」の導入をご検討ください。
セミオーダー型のシステム構築によりお客様のDX推進の基盤となる新システムを実現